◆2019.05.07加筆
DMM.makeを利用してドリルガイドを作ってみました。
設計は「FreeCAD」Mac版を使いました。
何度も試行錯誤を繰り返しながら、何度か試作品を3Dプリントしては、
設計を見直し、やっと落ち着いたかと思います。
今現在では、
径4.5mm用「ver.1.0.6」
径3.5mm用「ver.1.0.3」
径2.5mm用「ver.1.0.4」を『アトリエ・トリガ DMM支店』で販売しています。
<ドリルガイドとはなんぞや>
「ドリルガイド」とは、
ドリルで穴を空ける際に垂直になるようにする「治具」です。
専門家なら、目と手先の間隔だけで垂直にできるのでしょうけれど、
素人にはなかなか難しい作業です。
単に材料を固定するだけなら、少々斜めになっても影響はないのですが、
可動部の芯になる部分や、細い材料に穴を開ける場合は、
そういうわけにもいきません。
精密にとまでは言わなくとも、出来上がりに影響が出ない程度には、
垂直に穴を通さないといけない場合があります。
垂直に穴を開ける工具の代表格と言えば「ボール盤」なのですが、
この「ボール盤」という機材は、小型で安くても1万円以上します。
ある程度取り回しの良い大きさのものになれば、何万円もしてしまいます。
そこで、もっと簡易な道具で、おおよそ垂直に穴をあけられないか、
という需要に応えるべく市場に出回っているのが「ドリルガイド」です。
ですが、この「ドリルガイド」、イマイチよろしくないんですよね。
大きく分類すると二通りあります。
通常手に持って使う電動ドリルを使うのは同じなのですが、
本体側を固定するタイプと、ドリルの刃にあてがうタイプとがあります。
前者のタイプは、
どの機種でも合うわけではなく、使える組み合わせが決まっている上に、
価格が高めです。(それでもボール盤よりは安いが)
後者のタイプは、
ドリルの刃の直径に合う「駒」でないと使えないので、汎用性に乏しいのです。
実際、私は、2.5mmと3.5mmが欲しかったのですが、
製造販売されていないようで、見つかりませんでした。
<無ければ作ろうDIY>
そう。ここで、「Do It Yourself!」の精神ですよ。
幸い、3DCADは若干は使えていましたから、それでデータを設計して、
DMM.makeのようなサービスを利用して、3Dプリントしてやれば、
欲しいサイズの「ドリルガイド」が手に入るわけです。
一応、先駆者が居ないか、検索を掛けてみましたが、
DMMのクリエイターズマーケットには、ヒットする商品がありませんでした。
ならば。とやる気満々で設計をして3Dデータをアップロードし、
試作品を作って(購入して)みたのですが、上手くいかないのです。
<3Dプリントには誤差や癖がある>
何度か作り直してみて確信したのですが、3Dプリントには誤差や癖があり、
コンピュータ上で設計した通りの精密なものを出力することが、
まだできないようなのです。
最初に自作した「ドリルガイド」は、寝かせた向きで作りました。
すると、ドリルの刃を通す穴が、
円にならずに下になっている側が僅かに盛り上がっているのです。
丁度、アルファベットの「D」を左に倒したような形でしょうか。
これでは、商品になりません。
(上手く作れたらクリエイターズマーケットで出品したいと考えている)
次に、自作した「ドリルガイド」は、立てた向きで作りました。
すると、前回のようにはならなかったのですが、
微妙に真円ではなく楕円に見えるのです。
ここで、私はしばし悩むことになります。
私は乱視も入っていて、目はよくありません。
目の錯覚かとも思い、何か確かめる方法は無いかと考えているうちに、
ふと気付きます。
「もし、3Dプリンターに誤差があって、楕円になっているのだとしたら、
縦か横の外寸の長さが微妙に違うはずだ」と。
そして、測ってみると、確かにほんの極僅か、コンマ何mmか違うのです。
「やっぱり」と思うのもつかの間。
楕円になっているなら、どちらかが伸びているか縮んでいるはずなのですが、
その方向と、外寸の誤差との辻褄が合いませんでした。
悩みつつも、色々と測っていた時に、
一緒に注文(購入)した、「M字ブロック」の肉抜きの穴に目が行きます。
やはり、その穴も真円で設計してあったのに、微妙に楕円に見えるのです。
そこで、「M字ブロック」の肉抜きの同じ大きさの穴を垂直に合わせて、
そこを軸に90度にずらして覗き込んでみました。
よくみないとわからない程度にですが、やっぱり楕円になっているのでした。
上の穴から覗く、下の穴の縁が、左右のほうが幅が若干太いのです。
同じ大きさの真円同士を垂直に重ねたのであれば、どの方向も同じ幅になる筈です。
これで、革新した私は、DMMに問い合わせ、
どうにかならないものかと相談しました。
すると、ナイロンの場合(素材による)、ヘッドが往復でプリントするのだそうです。
これを一方向だけにするオプションがあるらしく、それを選択すれば、
誤差は小さくなるので、真円になるかもしれないとの事でした。
ただし、そのオプションを選択すると、価格が1.5倍になってしまうとの事。
それでは、現実的でなくなってしまいます。
また、確かに誤差があって楕円になっている事を認めつつも、
これはDMMの社内規定の範囲なので、これ以上の精度は上げられないのだそうです。
<ドリルガイドは消耗品>
「マイターボックス」と呼ばれる鋸ガイドもそうですが、
「ドリルガイド」は、ある程度の摩擦強度がある素材でできていないと、
少しずつ消耗していき、やがて精度は落ちていきます。
だからと言って、強靭な素材を使えば高価になってしまい、
「ボール盤」と同等か、それ以上になってしまいます。
ここは、「ドリルガイド」は、「消耗品」であると割り切って、
使用頻度が少ない人向けの商品なのだと位置付ける事にしました。
すると、安い素材を使えるので、価格も低く抑える事ができます。
<私のドリルガイドは「ならし」が必要>
さて、先の誤差と癖のところで、
真円の筈が楕円になってしまう問題が片付いていません。
現行では、そのままドリルの刃が通る筈の設計をしているのですが、
僅かに潰れているのでしょう。
そのままでは、ドリルの刃がギリギリ通らない感触です。
今のまま、穴にスムーズに通るように設計し直すと、
楕円の長手方向の「遊び」が大きくなってしまうので、
「ドリルガイド」としては致命的です。
なので、敢えてそのままにしておき、「ならし」が必要なものとすれば、
無駄な「遊び」を避けられます。
同時に、「ドリルガイド」自体が「僅かずつ削れるものなのだ」という認識を
購入者に持ってもらうことができます。
何度も使って精度が落ちてきたと感じたら、新調してもらえるというわけです。
<素材の選び方>
-
この「ドリルガイド」は、
穴を空けたい素材に先にセンターポンチなどで位置決めをしておき、
ドリル刃に一旦「ドリルガイド」を通してから、突き出したドリル刃の先を
その位置にあてがいズレないように押さえたまま、
「ドリルガイド」の台座部分を素材に押し付ける事によって、
ドリル刃を垂直を保つ使い方をします。
なので、素材は透明度が全く無いものでも実用になります。 -
透明度のある素材を使うと、位置決めにドリル刃の先端を合わせ易いのですが、
値段がやや高めになってしまいます。 -
一番安いのは、恐らく「ナイロン」の「ナチュラル」でしょう。
時々、素材によっては割引セールをやっているので、
必ずしも一番安いとは限りませんが。
「ならし」がし易い反面、消耗も早いでしょう。
使用頻度が少ない方にお薦めです。 -
金属類の素材を使えば、消耗は遅くできますが、「ならし」がし辛くなるでしょう。
また、価格が高くなってしまうので、あまりお勧めできません。 -
全ての素材を、設計者である私が試していないので、
これ以上の事はお問い合わせいただいても分かりません。 -
もし素材について詳しく検討したい場合は、
DMM.makeの「選べる素材一覧」を参照して下さい。
<刻印を読みやすくする>
-
使うドリル刃の直径と製品のバージョン、ガイドの長さといった
仕様を刻印してあるのですが、小さくて読み辛いと思います。
そこで、これを読みやすくします。
プラモデルなんかを作る人はご存知だと思いますが「スミ入れ」という技法です。-
使うものは、エナメル系塗料と、そのうすめ液、それから極細の筆です。
空の容器にエナメル塗料をちょっとだけ入れて、うすめ液で薄めます。
2倍〜5倍程度でいいかと思います。
お好みでどうぞ。これでスミ入れ塗料が出来ます。
最近は、「スミ入れ塗料」という専用のものも売っていますので、
それを買えば手間が省けます。 -
筆にスミ入れ塗料を含ませて、筆先で刻印の上に「ちょん」と触れると
毛細管現象で、隙間に浸透していきます。
それを何度か繰り返して、刻印全てに塗料を入れます。
この時、刻印の外にも少し塗料が付いてしまいますが、
後で取り除くので気にしなくて構いません。 -
エナメル系塗料は、割とすぐ乾くのですが、念の為
完全に乾燥させる為に、1時間くらい放置しておきましょうか。 -
塗料が乾燥したら、余分な塗料(汚れ)を取り除きます。
これには二通りのやり方があります。-
うすめ液で拭き取ってやる方法。
これは、素材の表面が平滑で浸透性のないものの場合にしか使えません。 綿棒の先などにうすめ液を染み込ませ、そっと拭き取ってやります。
この時、外側から刻印の溝に掃き込むような方向に動かしてやるのが
コツです。
もし、エナメル系のうすめ液で塗料が溶けない場合は仕方ないので、
より強いラッカー系のうすめ液を使ってください。 -
研磨紙で削り取る方法。
これは、素材の表面がザラザラと細かい起伏があったり、
浸透性が僅かにあったりする場合に使える方法です。
(浸透性が高いと使えない)
アテゴムなどと共に使って、表面を平らに削ってやります。
すると、表面の塗料が付いた部分が削れて、地が出てきます。
ただし、この方法は、削った粉が刻印の溝に入り込むため、
別途、エアダスターなどが必要になります。
エアダスターなどで、溝に入り込んだ粉を吹き飛ばしてやるのです。
-
うすめ液で拭き取ってやる方法。
-
使うものは、エナメル系塗料と、そのうすめ液、それから極細の筆です。
<バージョンの推移>
大まかに、バージョンの推移を掲載します。
-
ver.α
- 取り敢えず、頭の中のイメージをざっとラフに、「FreeCAD」Mac版上に書き出してみた。
-
ver.β(ver.1.0)
- 長さの違う二つを一組にする。(30mmと20mm)
-
いずれクリエイターズマーケットで出品する事を考慮に入れて、
コストを考慮に入れた向きと配置で設計し直す。 -
この時点で、最安の素材「ナイロン」の強度が分からないため、
試験的に台座部分を厚み5mmで設計する。
-
ver.1.0.1
- 思っていたより強度があるようなので、台座部分を3mmに薄くする。
- 各所の面取りをする。
- 仕様の刻印を1mmに深くする。
- 仕様の刻印の文字高さを0.6mmに低くする。
-
ver.1.0.2(ロストナンバー)
- 仕様刻印を大きくするために試行錯誤を繰り返した。
-
ver.1.0.3(径3.5mm用現行モデル)
- 仕様刻印をガイド筒部側面に移動する。
- 仕様刻印の文字高さを1mmに大きくする。
- 仕様刻印を彫りやすくするために平らなプレート状を付ける。
-
ver.1.0.4(径2.5mm用現行モデル)
-
仕様刻印の大きさを0.6mmから1.8mmにする事によって、
文字の潰れを回避し、読みやすくした。 -
※設計ミス有り。
セットの長さ30mmの方の台座部分の角を取り忘れている。
(面取りはしてある)
-
仕様刻印の大きさを0.6mmから1.8mmにする事によって、
-
ver.1.0.5
- ver.1.0.4の設計ミスを修正した。(台座部分の角を丸めた)
- 面取りの忘れ箇所があった。
-
ver.1.0.6
- ver.1.0.5の面取りの忘れ箇所を修正。
- 仕様刻印の文字の太さを、より太くし潰れを回避した。
<クリエイターズマーケットに出品>
と、いうわけで、
DMM内のクリエイターズマーケットに出店する事になりました。
『アトリエ・トリガ DMM支店』で、私の作った、簡易型の「ドリルガイド」が
お買い求めできます。
出品されていないサイズの要望などがございましたら、
こちらのサイトのメールフォームより、ご連絡を下さい。
(DMMのチェック・審査・製造工程に何日か掛かるため、お手元に届くまでには2週間〜3週間ほど、素材によってはもっと掛かってしまいます)
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